レモンが好き。
レモン味が好き、レモン風味が好き、レモンケーキが好き。
もちろん、味やレモンの使われているなにかが好きというのもある。
しかし、ここで書くレモンが好きというのは
造形や印象のようなこと。
「円とも楕円とも言えない形」
「みどりっぽい黄色」
「ざらついているような、艶やかなような表面」
手のひらに収まるそれがなんとも愛おしい。
絵を描く時のモチーフに対する視点や感動は、
レモンが育んでくれたのではないかとさえ思っている。
積み重なっていたり、転がっていたり、実っていたり、
そこに存在している状態の違いによっても受ける印象は変わる。
ぽてっとした見た目の印象と
口に含んだ時の刺激はおもしろいギャップ。
皿のうえでは華やかさを与え、ぼやけた味にはアクセントを加える。
主役でこそないけれど、十二分な役者っぷり。
レモンをテーマにした味や物に魅力を感じるというよりは、
レモンがもともと持つニュアンスのところに惹かれる。
レモン味のお土産やレモングッズをたくさんもらっても困る。
それならば、2つ3つばかりを紙袋にでも入れて渡された方がよほど感動を覚える。
食物の重量、存在を感じた瞬間にこそ描きたいという衝動が湧き立つ。
物質的な価値よりも重要なことを自然や食物は教えてくれている(思い出させてくれる)。