漫画に描かれている絵がとても綺麗だと思った。
漫画は読むことも好きだったけれど、
ぱらぱらとめくりながら、
絵を眺めているのも同じくらい好きだった。
いつしか、気に入ったシーンをスケッチブックに写すようになっていた。
絵についての興味が深まると、
「こんな風に描きたい」と思うようになった。
「こんな風に描きたい」と思って、
理想を目指して描けば描くほどワクワクしていたのを覚えている。
でも、理想を持って描き進めると、それを叶えることは随分と難しいことに気がつく。
理想に対して試行錯誤をすればするほど、
絵のことが分からなくなり、
楽しいという感情以外のものが嵐のように襲ってきた。
それは、自身が成長すればするだけ激しさを増した。
高校にあがるころには、絵を描くことが分からなくなっていた。
小さい頃、よくいく場所の一つに美術館があった。
当時は自分の興味というより、父の興味ではあったけれど、
なんだか頭のスミに"美術"の二文字が残った。
高校生になると、原画展や美術展で絵を見ることが増えていた。
そして、めちゃくちゃ本を読みふけっていた。
本を読んでいると物事を深く考える時間を与えてくれる。
美術展に行けば、作品や芸術家のバックグラウンドを学びたくなる。
だんだんと、絵としての巧さやビジュアル的な美しさを求めることよりも、
絵の内面的な部分に惹かれるようになった。
普段、どう過ごしてどんなものに関心があるのか。
絵ではなく、身の回りのことや感情的な部分に意識が向いた。
朝、窓の外をぼーっと眺める。
道に咲く草花。
屋上で揺れている洗濯物。
日々の些細な瞬間にさえ開放感を覚えた。
「絵を描きたい」と思った。
絵を描くことは楽しいばかりではないけれど、
苦しいことさえ受け入れて描いていきたい。
絵のための絵ではなく、本当に伝えたいことを伝える手段として
"描くこと"を選んだ、と今はそんな風に思う。